「しなやかな はなし」

散らかった心と頭を片づけて、穏やかに暮らすために

上野千鶴子先生の東大祝辞に教育社会学をみる

 

こんにちは。チビ子です。

 

東大入学式での上野千鶴子先生の祝辞が話題になっています。

 

特に議論の的となっているのは、

がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています

のくだりだと思います。

 

上野先生のこの発言を、ジェンダー研究の第一人者だからこそ、とみることもできますが、

私は社会学者としての立場が深く関与しているのではないかと思います。

 

祝辞において上野先生は、東大という教育の場を社会学者の視点から批判的に捉えたのですから、

これはまさに「教育社会学」なのですが、

 

他の教育学が往々にして、甘美で、ロマンティックであるのに対して、

教育社会学は、その学間的性格上、いささか辛辣であるように思います。

 

それは、教育学の多くが「こうあるべきだ」という理想論、当為論を内に秘めているのに対して、

教育社会学は「こうである」という事実に立脚しているからです。

 

上野先生が教育学の人であったなら、きっと

「みなさんの未来には、無限の可能性がある」

とかなんとか、言っていたかもしれません。

 

でも、社会学者はそうは言いません。

いつも事実から出発します。

 

けれどもその事実は、人々の夢や希望を打ち砕くための、冷や水ではありません。

 

社会学者は、「こうあるべきだ」という理想に向かって歩き出すために、

まず困難な現実をしっかりと見定めます。

 

ですから、上野先生のコトバはまさに、

これからの日本社会をかたちづくっていくであろう新入生への激励に他ならないと思うのです。