身体は社会的なものとつながっている
こんにちは。チビ子です。
以前から大切にしている本の1つに、波平恵美子さんの『医療人類学入門』があります。1994年に出版された本で、残念ながらすでに絶版になっています。
この本の中で1番印象に残っているのは、締めくくりで取り上げられている『ボディ・サイレント』という本の内容です。
波平さんによれば、『ボディ・サイレント』はアメリカのコロンビア大学で研究と教育に携わっていたロバート・F・マーフィーの著書で、
彼が脊髄腫瘍におかされて、徐々に身体の機能を失っていく経緯を16年間にわたって記したものです。
その内容の一部を『医療人類学』から引用したいと思います。
マーフィーが車椅子の生活を送るようになると、周囲の人々に対する彼の態度が変わっていった。(中略)
以前から治療をしてくれていた歯科医は、なんと彼の頭を(幼い子に対するように)撫でた。黒人の下働きの人は親しくあいさつするようになった。エレベーターで二人きりで乗り合わせるようになった場合、相手の女性は声をかけるようになった。距離を置いて接していた大学院生は彼をファーストネームで呼ぶようになった。(中略)
それに反し、中流層に属する同じような職業の同世代の男性たちはよそよそしく振る舞うようになった。
(波平恵美子『医療人類学入門』p.187)
波平さんが、マーフィーの体験を取り上げて伝えたかったことは、
「人間にとって身体とは何か」という問いであり、
「身体的条件は社会的なものと密接に結びついている」という指摘です。
もちろんかなり古い本なので、身体障害に対する理解が進み、今はこのような状況が少なからず改善されていると信じていますが、
これは身体に関わる仕事に就く者として、ずっと肝に銘じていることがらです。
『ボディ・サイレント』のようなケースがある一方で、発達障害の人たちは一見障害があるようには見えないために、周囲の人から本人の配慮不足や努力不足と誤解され、反感を持たれてしまうことがある、と聞いたことがあります。
発達障害についても、今はかなり理解が進んでいます。
読書家で知られるビル・ゲイツは、毎年おすすめの本を数冊紹介していますが、
過去には発達障害の人が主人公の小説、
『Rosie project』(邦題『ワイフ・プロジェクト』)とその続編の『Rosie effect』
を紹介しています。
実は今、BSで放送中の「グッド・ドクター」を観ながら、ブログを書いています。
主人公の研修医は自閉症で、名前はマーフィー。
今日の内容にシンクロです。